薬学部の勉強を応援するブログ

薬剤師国家試験、有機化学、医薬品化学、etc.

頻出!シクロヘキサンの立体配座【薬剤師国家試験 第107回 問102】

 シクロヘキサンの立体配座および配置の問題。

 国試にしろ定期試験にしろ、頻出の問題ですよね。

 

【1】×

 Hを省略せずにしっかりと書いて、配座異性体(下図のA')も書いて、確かめてみましょう。

 Aはシス体ではなくトランス体です。

【2】×

 Aを直接比べて、両者がエナンチオマーの関係にあるかどうかを判断するのは、けっこう難しいです。

 Aのエナンチオマーを書き出して、それが一致するかどうかを判断するほうが簡単です。

 ・まずはAのエナンチオマー(ent-A)を書き出す

 ・次にent-Aを比べる。そのままだと分かりづらいので、どちらか一方の向きを変える(図ではを左右逆にしたのち、環を反転させてア’としている)

 両者は異なる化合物(立体異性体)なので、選択肢の記述は間違いです。

 

【3】○

 選択肢【1】で示した配座異性体A'の構造から、と同じものであることが分かりますよね。

 というわけで、この選択肢は正しいです。

 

【4】○

 上もしくは下を向くのがアキシアル位で、横側を向くのがエクアトリアル位です。

 したがって、選択肢の記述は正しいです。

 ちなみに、シクロヘキサン環を地球に見立てて、置換基が地球の軸(axis)の方向に出ていることから、『axialアキシアル)』、赤道(equator)の方向に出ていることから『equatorialエクアトリアル)』と呼ばれています。

 

【5】×

 1,3-ジアキシアル相互作用は、アキシアル位にある置換基の間で働くものです。

 下図は、メチル基とHの間で働く1,3-ジアキシアル相互作用を示しています。

 

 Aがもつメチル基は(2つとも)エクアトリアル位であるため、選択肢の記述は間違いです。

 

 というわけで、正解は【3】と【4】でした。

 

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 問題の出典: 厚生労働省ホームページ

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198924.htmll

不対電子をもつかどうか判断するコツ【薬剤師国家試験 第107回 問9】

 不対電子を1つもつということは、分子を構成する原子がもつ価電子の総数が、奇数のはずです。

 電子2つで1本の共有結合、電子2つで1組の非共有電子対ですからね。

 奇数ならば、余った1個の電子が不対電子になるはずです。

 価電子の数を数えていきましょう。

 

【1】C:4個、O:6個、合計10個

【2】N:5個、O:6個、合計11個

【3】S:6個、O:6個、合計24個

【4】O:6個、合計12個

【5】N:5個、合計10個

 

 というわけで、正解は【2】の一酸化窒素です。

 

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際どい立体異性体 ーキニジンとキニーネー【薬剤師国家試験 第107回 問8】

 キニジンとキニーネに関する問題。

 選択肢【1】【2】の記述を読んでみると、両者がエナンチオマーの関係にあるのか、ジアステレオマーの関係にあるのか判断する必要があるようです。

 

 選択肢【3】では、構造異性体の関係にあるかどうか聞かれています。

 もしこの選択肢がなくても、2つの化合物の立体配置を比べるときは、まずは構造異性体ではないことを確認しておくことが前提として大切です。

 

【1】×

 エナンチオマーの関係にあるならば、キニーネの全ての不斉炭素原子が、キニジンがもつ不斉炭素原子の逆の立体配置であるはずです。

 下図のように、赤い矢印で示したところは逆の立体配置ですが、青い矢印で示したところは同じ立体配置です。

 したがって、両者はエナンチオマーの関係ではありません。

 なお、キニジンかキニーネをひっくり返してみて、鏡像関係にあるのかどうか確認してもOKです(本番は時間がないので勉強時にやってみるといいと思います)。

 

【2】○

 選択肢【1】の解説で示したとおり、複数の不斉炭素原子をもち、その一部の立体配置が同じで、一部が逆の立体配置です。

 このような場合、両者はジアステレオマーの関係にあります。

 なお、分子内に対称面が存在する場合はメソ体なのでエナンチオマーの関係でもジアステレオマーの関係ではなく、まったく同じも化合物です。

 もちろん、今回のキニーネとキニジンのケースには当てはまりません。

 

【3】×

 立体配置を抜きにして両者の構造を見比べてみると、同じ化合物ですよね。

 というわけで、構造異性体ではありません。

 

【4】×

 ジアステレオマーの関係にあるものの融点は、原則として一致しません。

 エナンチオマーの関係にあるものならば、必ず一致します。

 

【5】×

 ジアステレオマーの関係にあるものの比旋光度の絶対値は、原則として一致しません。

 エナンチオマーの関係にあるものならば、符号は異なりますが絶対値は必ず一致します。

 

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混成軌道から考える立体的な形【薬剤師国家試験 第107回 問7】

 それぞれの化学種の形を考える問題。

 基本的にはsp2混成ならば平面構造、sp3混成ならば三角錐(四面体)です。

 

【1】メチルカチオンの炭素原子はsp2混成であり、平面構造です。

【2】メチルアニオンの炭素原子はsp3混成であり、三角錐型の構造です。

 結合に使われていない2つの電子(非共有電子対)はsp3混成軌道に入っています。

【3】BF3のホウ素原子はsp2混成であり、平面構造です。

【4】メチルラジカルはsp2混成であり、ほぼ平面構造です。

 じつは浅い三角錐の構造が速やかに反転している可能性を示唆する研究もあり、”ほぼ(事実上)平面構造”という言い方をしています。

【5】ホルムアルデヒドの炭素原子はsp2混成であり、平面構造です。

 

 というわけで、正解は【2】です。

 

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化合物の命名はメインの構造を見抜くところから始まる【薬剤師国家試験 第107回 問6】

 第107回薬剤師国家試験。

 まずは化合物を命名する問題です。

 

 はじめに大まかな構造(主鎖+もっとも優先順位の高い官能基)を考えましょう。

 ”3-メチルブタ-2-エン-1-オール”ということで、主鎖は炭素原子4つ(ブタ-)で、もっとも優先順位の高い官能基はヒドロキシ基(-1-オール)です。

 これに相当するのは選択肢【3】【4】【5】です。

 

 次に、細かいところを見ていきましょう。

 ”3-メチル”なので3位にメチル基があり、”-2-エン-”なので2位と3位の炭素原子間が二重結合で結ばれているようです。

 これに相当するのは【5】の化合物です。

 

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重水添加で消失するシグナルは大ヒント【薬剤師国家試験 第106回 問107】

 恒例の1H-NMRスペクトルに関する問題。

 今回、重水の添加が大ヒントになっています。

 まず、【5】の選択肢は重水素で置換されるHがないので、選択肢から除外します。

 【1】~【4】にはカルボキシ基またはフェノール性水酸基があるので、重水素で置換されるHがあります。

 4.8 ppm付近にシグナルが検出されるのは、フェノール性水酸基のほうです。

 カルボキシ基のシグナルは11 ppmなど、もっと低磁場に検出されるはずです。

 したがって、正解は【1】か【2】です。

 重水から得られる情報だけで選択肢を2つに絞れました*1

 

 この2つの構造で異なる部分は、ベンゼン環のHです。

 両者のHについて、対称性に関する環境が似ているので、判断に困るところです。

 しかし......

 【1】のHは主にオルト位の関係にあるので、結合定数は6~9Hz

 【2】のHはメタ位の関係にあるので、結合定数は1~3Hzと比較的小さい

 この違いが、正解が【1】なのか【2】なのかを判断する材料になります。 

 そして次に着目するのが、最も高磁場にある、イソプロピル基における結合定数です。

 このような飽和炭化水素においては、結合が3つ離れた位置関係にある結合定数は6~8Hzです(ベンゼン環のオルト位の関係のときと同じくらいの値)。  

 これら結合定数によって、スペクトル上における、対応する分裂した2本のピークの間隔が決まってきます。

 つまり、結合定数の値が大きいほど分裂した2本のピークの間隔が大きく、値が小さいほど間隔が小さい(もしくは分裂が観測されない)のです。

 問題のスペクトルから目視で確認すると、ベンゼン環のHにおけるピークの間隔は、イソプロピル基のCH3のものと同じ程度ですよね。

 したがってベンゼン環のHはオルト位の関係にあり、正解は【1】です。

 

*1 この問題には直接関係ありませんが、分子内水素結合を形成している場合はフェノール性水酸基のシグナルがもっと低磁場に観測されます。詳しくは下記をご覧ください↓

chemist-programming.hatenablog.jp

 

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酵素と補酵素が協力する生体内の酸化反応【薬剤師国家試験 第106回 問106】

【1】○

 イミダゾリル基は、塩基として第二級アルコールのヒドロキシ基に働きます。

 問題文の巻き矢印の流れを追っていくと、グルタミン酸残基がイミダゾリル基のプロトンを引き抜き、その流れで(その影響を受けた)イミダゾリル基がβ-ヒドロキシアシルCoA(基質)のヒドロキシ基のプロトンを引き抜いていますよね。

 したがって、グルタミン酸残基がイミダゾリル基の塩基性を高めていると言えるので、選択肢の記述は正しいです。*1

 

【2】○

 イミダゾリル基は、ヒスチジンがもつ側鎖なので、この記述は正しいです。

 

【3】×

 補酵素はNAD+です。ヒドリド(H)を1つ受け取ってNAD+がNADHになります。ちなみにNAD+はナイアシン(ビタミンB3)が体内で変換されたものです。

 FADの場合、Hを2個受け取ってFADH2になります。これはリボフラビン(ビタミンB2)が体内で変換されたものです。

 Hが1個増えるならNAD+、2個受け取るならFADです。

 

【4】×

 プロトン(H+)ではなくヒドリド(H)を受け取ります。

 なお、巻き矢印は下図のように書いたほうが正確です。

 問題の巻き矢印の書き方だと、β-ヒドロキシアシルCoAの炭素原子と補酵素が結合することになってしまいます(炭素原子から出る手が5本になってしまう)。

【5】×

 補酵素の構造内にピリミジン骨格はありません。

 というわけで、正解の選択肢は【1】と【2】です。

 

*1 個人的には、グルタミン酸残基はイミダゾリル基のプロトンを引き抜いていない可能性も考えています。グルタミン酸残基の負電荷が、イミダゾリル基がプロトン化される際に生じる正電荷を安定化させているだけ......という可能性です(選択肢【1】の正誤は変わりません)。ここの相互作用については加水分解酵素における類似のメカニズムを参考にしてください↓

chemist-programming.hatenablog.jp

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