ばけがくしゃの勉強ブログ

薬剤師国家試験、有機化学、プログラミング、etc.

【薬剤師国家試験 第103回 問105】酵素と基質の相互作用について考えよう

 問105は随分と難しそうな問題が出題されました。

 タンパク質の活性部位に関する問題です。

f:id:chemist-programming:20200212105500p:plain【1】……セリン残基(–OH)がアミド構造のカルボニル基に求核攻撃することにより、ペプチド結合の分解が始まります。

           f:id:chemist-programming:20200219085440p:plain

 ヒスチジン残基は、水素結合することによってセリン残基の求核性を高めています。

 セリン残基の酸素原子の部分負電荷(δ–)を高めている(もしくはセリン残基を脱プロトン化している)わけです。

 よって、この記述は正しいです。

 

【2】アスパラギン酸残基の負電荷により、イミダゾリル基のHが、部分正電荷(δ+)を帯びますよね。 

           f:id:chemist-programming:20200219085541p:plain

  この影響によって、イミダゾール環自体は相対的に、よりマイナス性を帯びます。

 これはイミダゾール環の電子密度が高まっていることを意味しています。

 そのため、ヒスチジン残基は、よりセリン残基のHと相互作用しやすくなります(【1】の図を参照)。

 イミダゾリル基の塩基性はむしろ高くなっているため、【2】の記述は間違いです。

 

【3】基質タンパク質(や低分子)と酵素の相互作用には、いくつかのパターンがあります。

 水酸基やアミノ基などの間で生じる「水素結合」や、カルボキシラートイオンとアンモニウムイオンとの間で生じる「イオン結合(塩橋)」などです。

 他にも、問題の図に記載されているフェニル基のような疎水性の置換基が、酵素の疎水性ポケットと相互作用することが分かっています。

 よって、【3】の記述は正しいです。

 

【4】セリン残基の役割は【1】で述べたとおりです。

  セリン残基の水酸基が、ヒスチジン残基と相互作用しつつ、カルボニル基に求核攻撃するんですよね。

 よって、この記述は間違いです。

 

 正解は【1】と【3】でした。

 

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問題の出典: 厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198920.html 

【薬剤師国家試験 第103回 問104】原因を予想してから改善方法を考えよう

 問104は、酸塩化物とアミンの反応に関する問題です。

f:id:chemist-programming:20200212105437p:plain 問題文からは、反応が途中で止まってしまったので、その改善方法を聞かれていることが分かりますよね。

 かなり実践的な問題ですね。

 反応機構をしっかり書いておきましょう。

 改善方法を考える前に、なぜ止まってしまったのかを考えましょう。

 原因を予想してから、改善を試みることが大切です。 

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 反応機構をよく見てみると、塩基として働いているベンジルアミンがあることが原因のようです(上記スキームの赤い波線)。

 塩基として使われたベンジルアミンは塩酸塩となってしまうので(上記スキームの赤い二重線)、塩化ベンゾイルとの反応には使われませんよね。

 反応が半分だけ進行したのちに停止してしまったというのも頷けます。

 反応機構を書くことができれば、このような結論に至ることができます。

 

【1】……トリエチルアミンを加えておくと、どうなるのでしょうか?

 この化合物を加えておけば、ベンジルアミンの代わりにプロトンを捕捉してくれます。

  そのため、ベンジルアミンが塩基として働かずに済み、すべて塩化ベンゾイルと反応してくれるでしょう。

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 もちろん、トリエチルアミンが先に塩化ベンゾイルと反応することもあるでしょう。

 その後、続けてベンジルアミンが反応するため、この場合も塩酸塩になるのはトリエチルアミンです。

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 いずれの経路にせよ、ベンジルアミンのほぼ全量を塩化ベンゾイルと反応させるために、トリエチルアミンを加えることは適切な改善方法です。

 

【2】……ベンジルアミンを増やすと、どうなるのでしょうか?

 上記のとおり塩酸塩になってしまうわけですが、増やしたことによりベンジルアミンが余るので、反応が半分進行したところで止まるということはなさそうですよね。

 この処置も、適切な改善方法になります。

 

【3】……塩化ベンゾイルを消費したいのに、増やしてしまってはいけませんよね。

これは改善方法として全く適切ではありません。

 

【4】……メタノールは、塩化ベンゾイルと反応してしまうでしょう(下記参照)。 

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 そのため、選択肢【4】も適切な改善方法ではありません。

 

【5】……濃度が高くなって反応速度は大きくなりそうですが、これではベンジルアミンの塩酸塩が生じるという根本的な問題を解決できません。

 したがって、これも適切な改善方法ではありません。

 

 以上のことから、【1】と【2】が正解です。

反応が途中で止まってしまう原因を予想してからでないと、正解にたどり着くことは難しいと思います。

 問104は良問でしたね!

 

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問題の出典: 厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198920.html

【薬剤師国家試験 第103回 問103】SN1反応の反応機構を書いて解こう

 問103は、問題文にSN1反応と明記してあります。

 SN1反応の知識をもって解いていきましょう。

f:id:chemist-programming:20200212105355p:plain【1】……命名法に関する設問です。

 鎖状の炭化水素命名する際には、はじめに主鎖を見極めましょう。

 一番長い炭素鎖を探します。

 一番長い部分は下に示したところで、炭素数が5つなのでペンタンですよね。

        

 主鎖に結合している置換基は、メチル基が2つにブロモ基が1つですよね。

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 【1】の設問では、これら3つの置換基の位置を「3,3,4」とナンバリングしています(下図の左)。

 そうではなく、「2,3,3」になるように(なるべく小さな数字を多く使うように)主鎖に番号を振ります(下図の右)。

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 この時点で、選択肢の命名は間違っていることが分かります。

 正しく命名すると、「3-bromo-2,3-dimetylpentane」ですね。

 アルファベット的に「methyl」より「bromo」の方が若いため、「bromo」を前にもってきています(このとき、「di」はカウントしません)。

 最後に、絶対立体配置について考えます。

 下のようにして優先順位を決めると、Sであることが分かりますね。

 これは第103回の問7でも解説しました。

 

【2】……次に示すように、SN1反応はカルボカチオン中間体を経由するメカニズムで進行するんでしたね。

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 このカルボカチオンは平面構造をとっており(sp2混成)、両方の面から1:1の割合で水分子の求核攻撃を受けます。

 したがって、光学的に純粋にはなり得ません。

 

【3】……SN1反応は、1分子の濃度で決まります。

 式で表すと、次のようになります。

 

     v = k [R-X]

 

 SN1反応の「1」は、反応速度vが1種類の化合物(ハロゲン化アルキルR-X)の濃度に比例することを意味しているんでしたね(kは反応速度定数)。

 

【4】、【5】……これまでの解説から、この2つの選択肢が正しいことが分かりますね。

 発生したカルボカチオン中間体に、水分子が求核攻撃します。

 

 したがって、正しい記述は 【4】と【5】です。

 

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問題の出典: 厚生労働省ホームページ(

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198920.html

【薬剤師国家試験 第103回 問102】エポキシ化→加水分解の反応機構を書いて考えよう

 問102は反応機構に関する問題です。

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 有名な試薬である「m-クロロ安息香酸」が登場しています。

 この試薬を使っているときは、たいてい「エポキシ化」か「Baeyer–Villiger酸化」の反応に関する問題になります。

 今回は、この試薬をオレフィンと反応させているので、エポキシ化です(ケトンやアルデヒドの場合はBaeyer–Villiger酸化でしょう)。

 その後で、酸性条件下で加水分解していますね。

 それでは、反応機構を書いてみましょう。

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 ここまでがエポキシ化です。

 2段階目は、水存在下、酸性条件でエポキシドを開環させていますね。

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 水分子が求核攻撃する際の位置選択性は、カルボカチオンの安定性によって決定されます。

  エポキシドの酸素原子がプロトン化されて生じた化合物Aは、下記のような共鳴構造式が書けますよね。

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 カルボカチオンが安定化される方の極限構造式の寄与が大きいわけです。

 ちなみに、塩基性条件の場合は立体障害の小さい方から水分子が求核攻撃するんでしたね。

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 それでは、選択肢1〜5について考えてみましょう。

 生成物の『ア』で示された酸素原子が、試薬や水分子のどの酸素原子に由来するのかを聞かれています。

 反応機構から、明らかに2の選択肢が正解ですね。

 反応機構を理解していれば、他の選択肢には惑わされませんね。

 

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問題の出典: 厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198920.html

【薬剤師国家試験 第103回 問101】シクロヘキサン誘導体の最安定配座を書いてみよう

 問101はシクロヘキサン誘導体の立体配座に関する問題です。

 設問に色々書いてありますが、まずは最も安定と思われる立体配座を図示してみましょう。

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 今さらかもしれませんが、シクロヘキサンの書き方を確認しておきますね。

  下図のように、平行な線を2本ずつ、順番に書いていきます。

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 これが、いす形配座です。

 置換基も書いておきますね。

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 ちなみに、ふね形配座は、次のような形でしたよね。

 図に示した置換基同士がぶつかてしまうため、不安定な配座です。 

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 問題になっているシクロヘキサン誘導体の話に移りましょう。

 最も安定な立体配座について聞かれていますので、もちろん、ふね型配座で書きます。

 一番かさ高い「イソプロピル基」がエカトリアルに配向するように書きましょう。

 続いて、それに対応する形で水酸基とメチル基を書いていきます。*1

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 書き終えた最も安定な立体配座の図を見ながら、各設問に解答していきましょう。

【1】……いす形配座なので、もちろん◯です。

【2】……エカトリアル位なので、×です。

【3】……もちろん◯ですね。 

【4】と【5】……図示して見ましょう。

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 この図から、【4】と【5】のどちらも◯であることが分かります。

 図を正確に書くことができれば、正解できますね。

 

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問題の出典: 厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198920.html

【薬剤師国家試験 第103回 問100】酸素分子の電子数を数えることから始めよう

 今回から理論問題に移ります。

問100は非常に難しそうな問題ですが、落ち着いて解いていきましょう。

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 電子(↑と↓)の総数を数えてみると、17個ありますね。

 酸素原子(O)の電子数は8なので、酸素分子(O2)ならば電子を計16個もっていることになりますよね。

 酸素原子の電子数を覚えていなかったら、H, He, Li, Be, B, C, N, O……と、地道に数えていきましょう。

 ということは、酸素原子3つ分で構成されている5のオゾンは、すぐに除外できます。

 また、選択肢1と2の一重項酸素および三重項酸素は、どちらも酸素分子(O2)のことを意味しています。

 「一重項」と「三重項」は、電子の状態を表す用語であり、電子の数とは関係がないんでしたね。*1

 そのため、一重項酸素と三重項酸素の電子数はどちらも16であり、正解ではありません。

 残され選択肢は、3のスーパーオキシドと、4の過酸化物イオンです。

 スーパーオキシドの電子数は、イオン式の右上にマイナスが表記されているので、(酸素分子の電子数)+1= 17です。

 一方、過酸化物イオンの電子数は、イオン式の右上に2-と表記されているので、(酸素分子の電子数)+2= 18になります。

 以上のことから、答えは3番のスーパーオキシドです。

 問題の図を見ていると難しそうな問題でしたが、電子数を数えれば正解にたどり着けますね。

 

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問題の出典: 厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198920.html

【薬剤師国家試験 第103回 問10】酸性度は共役塩基を比較しよう

 問10は、pKa値に関する問題です。

酸性度や塩基性度を比較する問題は頻出ですよね。f:id:chemist-programming:20200212103715p:plain

 化合物の酸性度を比較するときは、プロトンを放出した後のアニオン(共役塩基)を考えると分かりやすいです。

 各々のカルボン酸を眺めてみると、酢酸および酢酸にハロゲンが置換した化合物であることが分かりますね。

 ハロゲンの電気陰性度の大きさはF > Cl > Br > Iの順番なので、Fがもっとも電子を引っ張る力が強いことが分かります。

 つまり、共役塩基であるカルボキシラートイオンを、より安定化できるということですよね。

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 従って、フッ素が置換している2番の化合物(モノフルオロ酢酸)が、もっともプロトンを放出しやすい(= pKa値が小さい)ことになります。

 

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問題の出典: 厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198920.html