薬学部の勉強を応援するブログ

薬剤師国家試験、有機化学、医薬品化学、etc.

共有結合を形成する薬の問題【薬剤師国家試験 第107回 問106】

 

 問題の反応式を見てみると、ボルテゾミブのホウ素原子と、タンパク質中の水酸基が結合しています。

 水素結合などの弱い相互作用ではなく、しっかりと共有結合する比較的新しいタイプの薬です(結合する際の様式は片方が2個の電子を与える配位結合ですが)。

 

【1】×

 ピリミジンではなく、ピラジンです。

 窒素の位置に注意しましょう。

【2】×

 水素原子を向こう側にして、優先順位の高い置換基の順にたどっていきます。

 不斉炭素原子に直接結合している原子に着目し、原子番号が大きいほうから順に『N→C→B』とたどっていくと、時計回りなのでR配置です。

 原子番号が分からなくなったら、『水兵リーベー……』と数えましょう。

 この「R」はラテン語の右を意味するこの単語(rectus)に由来します。

 「S」は左を意味するこの単語(sinister)に由来します。

 ちなみに私は、時計回りだったら現実……リアル(Real)の世界なので「R」。

 そうでないなら「S」と覚えています。

 

【3】○

 ルイス酸とルイス塩基について考えましょう。

 電子対を与えるほうがルイス塩基で、それを受け取る空軌道をもつほうがルイス酸です。

 ホウ素原子は空軌道をもち、ヒドロキシ基の酸素原子は非共有電子対をもちます。

 そのため、ボルテゾミブがホウ素原子を使ってルイス酸として働き、β5サブユニットがトレオニン残基のヒドロキシ基を使ってルイス塩基として働いています。

 

【4】×

 ホウ素原子の電子配置は[(1s)2 (2s)2 (2p)1]。

 1s軌道の電子は結合形成に使われないので、ホウ素原子の価電子の数は3個です。

 ボルテゾミブの構造内のホウ素原子の周囲だけルイス構造式で書いてみました(下図)。

 それ以外は実線で書いていたり波線で省略していたり、変則的な示し方になっていますのでご注意ください(正式な書き方とは言い難い)。

 このホウ素原子に属している電子を数えてみましょう。

 ホウ素原子とその他の原子でシェアしている6つの電子を半々にして数える……という意味です。

 ホウ素原子に属している電子の数は3個であり、元々の価電子の数と合っており、形式電荷は書かれません(あえて符号と数字で表すとしたら±0)。

 問題に示されているボルテゾミブの構造式を見てわかるとおり、やはりホウ素原子上に形式電荷は書かれていませんよね。

 それに対して、問題の複合体は、下図のとおりホウ素原子に属している電子が4個なので、ホウ素原子の価電子の数よりも1個多いです。

 (負の電荷をもつ)電子が1個多い状態なので、ホウ素原子の形式電荷は−1というわけです。

 +1ではないので、【4】の選択肢の記述は間違いです。

 なお、形式電荷の付け方の詳細を知りたい方は、次の記事を参考にしてください↓

chemist-programming.hatenablog.jp

 

【5】○

 複合体のホウ素原子は4本の単結合をもつため、sp3混成軌道といえます。

 

 以上のことから、正解は【3】と【5】の選択肢です。

 

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 問題の出典: 厚生労働省ホームページ

(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198924.htmll)

ヨードホルム反応では何が起こっているのか【薬剤師国家試験 第107回 問105】


 

 確認試験に関する記述の中に「ヨウ素」と書かれていて、選択肢の中には「ヨードホルム」と書いてあります。

 というわけで、『ヨードホルム反応』を想定しながら解いていきましょう。

 

 ヨードホルム反応は、反応物がメチルケトンの構造をもつと起こります。

 用いる試薬は「I2」と「NaOH」です。

 下記のようにヨウ素がカルボニル基のα位で反応するわけですが、それが計3回繰り返されます。

 そして、塩基性条件下で加水分解されると、『−CI3』が脱離します。

 その後、これがプロトン化されて、ヨードホルムが沈殿するという仕組みです。

 同じ反応が計3回繰り返される必要があるため、カルボニル基の隣はメチル基でなくてはいけません(Hが3つ必要)。

 これらを踏まえて、選択肢の記述を見ていきましょう。

 

【1】○

 上記の反応機構から、ヨウ素は求電子剤です。

 

【2】○

 イソプロパノールはアルコールなので反応しないと思ってしまうかもしれませんが、この記述は正しいです。

 ヨウ素が酸化剤となり、イソプロパノールがアセトンになります。

 メチルケトン構造が生じ、続けてヨードホルム反応が起こるというわけです。

 ちなみに、「イソプロパノール」は薬局方に掲載されている名前です。

 試薬会社も薬局方に準じているようで、売り物の瓶のラベルにも“イソプロパノール”と書いてあったのを覚えています。

 純粋な有機化学の世界では、「イソプロピルアルコール」や「2-プロパノール」と呼ぶほうが望ましいです(先生に怒られてしまう場合があります……)。

 

【3】×

 上述のとおり、ホルミル基ではなくメチルケトン構造です。

 

【4】○

 その通りです。

 反応機構で示したとおり、塩基性の試薬がないと反応が進みません。

 ヨードホルムが生成する確認試験として、ヨウ素と水酸化ナトリウムをセットで覚えておきましょう。

 

【5】○

 上に示したように、淡黄色の沈殿の正体はヨードホルムです。

 ちなみに、この総称は「ハロホルム」で、他にはクロロホルム(CHCl3)やブロモホルム(CHBr3)などが含まれます。

 

 以上のことから、正解(間違っている記述)は【2】の選択肢です。

 アルコールがヨウ素で酸化されることを予想するのは少々難しいのですが、ヨードホルム反応が起こるために必要なのは「ホルミル基」じゃなくって「メチルケトン構造」だと気づければ解ける問題だと思います。

 

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共鳴構造式から見抜くベンゼン環の位置選択性【薬剤師国家試験 第107回 問104】

 ベンゼン環における求電子置換反応の問題。

 位置選択性が問われていますね。

 ベンゼン環上の置換基が示す配向性は「オルト-パラ配向性」と「メタ配向性」に分類されます。

 その置換基がもつ共鳴効果や、中間体の共鳴構造式を考えれば、どちらの配向性なのかが見えてきます。

 それでは、選択肢を一つずつ見ていきましょう。 

 

【1】×

 アセトアニリドにおいては、下記の共鳴構造式が書けます。

 アセチル化されたアミノ基の共鳴効果(供与性)により、そのオルト位とパラ位の電子密度が大きくなっていますよね。

 アミノ基がアセチル化されて、その供与性は弱まっていますが、配向性はアミノ基のときと変わらずオルト-パラ配向性です。

 問題の主生成物はメタ位に置換しているので、【1】の選択肢の記述は間違っています。

 このように考えると結論に至るまで早いのですが、中間体における共鳴構造式を書いてみても構いません(むしろ教科書ではこちらで説明している方が多い印象)。

 下図にアセトアニリドに対して臭素が作用する際の反応機構と、生じる中間体の共鳴構造式を示しました。

 上からオルト位、メタ位、パラ位で反応が起こっている様子です。

 極限構造式A、Bからは、さらに次のような共鳴構造式が書けます。

 

 オルト位とパラ位に臭素が反応したものの中間体は、より多くの極限構造式*1が書けるため、メタ位のものより安定なのです。

 

【2】×

 次の図は、トルエンに対して二トロニウムイオンが作用する際の反応機構と、生じる中間体の共鳴構造式です。

 やはり上からオルト位、メタ位、パラ位で反応が起こっている様子です。

 極限構造式C、Dはメチル基が直接結合している炭素原子が正電荷をもちます。

 つまり、メチル基が効果的に共役している(超共役)ため、オルト-パラ配向性です。

 問題の主生成物はメタ位に置換しているので、【2】の選択肢の記述は間違いです。

 

【3】×

 今度は、アセトフェノンに対して二トロニウムイオンが作用する際の反応機構と、生じる中間体の共鳴構造式を示しました。

 こちらも上からオルト位、メタ位、パラ位に二トロニウムイオンが反応する経路を示しています。

 オルト位に反応した際の極限構造式E、パラ位に反応した際のFは、アセチル基が直接結合している炭素原子が正電荷をもっています。

 アセチル基は電子求引性基であるため、その隣に正電荷をもつEとFは寄与が小さい極限構造式になります。

 というわけで、そのような極限構造式がないメタ位が優先して反応します。

 問題の主生成物はオルト位とパラ位に置換しているので、【3】の選択肢の記述は間違いです。

 

【4】×

 メチル基は、【2】の解説のとおりオルト-パラ配向性を示します。

 ヒドロキシ基の場合は、ベンゼン環に直接結合している酸素原子が非共有電子対をもつため、【1】の選択肢と同様の考え方でオルト-パラ配向性を示します。

 というわけで、選択肢【4】の化合物にはオルト-パラ配向性の置換基が2つ置換しています。

 この場合、電子供与性基として強いほうの配向性が優先されます。

 電子供与性基としての強さは、ヒドロキシ基>メチル基です。

 とくにメチル基の電子供与性は超共役によるものなので、ヒドロキシ基やアミノ基の電子供与性よりも弱いのです。

 選択肢【4】の主生成物は、そんなメチル基の配向性が優先されている化合物です。

 ブロモ基が置換した位置は、メチル基の視点だとオルト位であり、ヒドロキシ基の視点だとメタ位ですよね。

 ヒドロキシ基のオルト位に置換したものが正しい主生成物なので、【4】の選択肢の記述は間違いです。

 

【5】○

 ブロモ基は、誘起効果(強い求引性)によってベンゼン環の電子密度を低下させつつも、共鳴効果(弱い供与性)によってオルト-パラ配向性になります(下図参照)。

 【5】の主生成物はオルト位とパラ位に置換しているので、この選択肢の記述は正しいです。

 というわけで、正解は【5】の選択肢でした。

 

 最後に、過去に出題された類題の紹介。

 第105回問104では、ベンゼン環の反応の位置選択性について詳しく(オルト位かパラ位か?)問われています。

 こちらも解説していますので、下記リンクから是非どうぞ↓

chemist-programming.hatenablog.jp

 

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 問題の出典: 厚生労働省ホームページ

(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198924.htmll)

*1:「極限構造式」という用語については次の記事をご覧ください↓

chemist-programming.hatenablog.jp

まずは平面構造で判断すればOK【薬剤師国家試験 第107回 問103】

 メソ体かどうか、ということなので生成物は分子内に対称面をもつはずです。

 まずは生成物の立体配置を考えずに構造を書き出し、その平面構造から、その分子が対称面をもち得るのかどうかを見ていきましょう。

 その後で、該当するもののみ立体配置を考慮して構造を書き出し、対称面をもつものを見つけ出していきます。

 このやり方ならば、全ての化合物について立体配置を考える手間が省けるはずです。

 

 各々の生成物は以下のとおり。

 【1】~【3】の生成物は、立体配置によっては対称面をもち得ます。

 【4】と【5】の生成物は、立体配置がどうなろうと、対称面をもつことはありません。

 この時点で対称構造をもたないと、立体配置を考慮したとしても対称面をもたないですよね。

 というわけで、【4】と【5】の選択肢は除外します。

 それでは、【1】【2】【3】について、立体配置も含めて全ての可能性を見ていきましょう。

 【1】は中間体であるブロモニウムイオンA-1およびA-2を経由したアンチ付加。

 A-1から生じるB-1とB-2はエナンチオマーの関係です。(どちらか一方を裏返してみると分かりやすいです)。

 A-2から生じるB-3とB-4もまた、エナンチオマーの関係です。

 というわけで、メソ体ではありません。

 なお、これら4つの生成物を見比べてみると、B-1=B-4、B-2=B-3であることが分かります。

 【2】もブロモニウムイオン(C-1およびC-2)を経由したアンチ付加。

 向きを変えてみると分かりますが、生じる4つの生成物は全て同じものです(D-1=D-2=D-3=D-4)。

 というわけで、【2】の生成物がメソ体です。

 正解は【2】の選択肢でした。

【3】は四酸化オスミウムを用いたジヒドロキシ化で、シン付加。

 F-1とF-2は、エナンチオマーの関係であり、メソ体ではありません。

 今回、最初に行なったように、平面の段階で選択肢から除外できるものは除外しておきましょう。立体配置を考えなくて済みます。

 なお、立体配置のついては次のように結果だけを暗記する方法もありますが、構造や反応を応用されると間違ってしまう恐れがあります。

 ・trans-2-ブテン + anti付加 → メソ体

 ・trans-2-ブテン + syn付加 → ラセミ体

 ・cis-2-ブテン + anti付加 → ラセミ体

 ・cis-2-ブテン + syn付加 → メソ体

  1,2-ジメチルシクロヘキセン(=今回の選択肢【1】)の場合もcis-2-ブテンの結果と同様

 

 国家試験の対策段階では、今回のように構造を省略せずに生成物をなるべく書き出し、一つひとつ構造を確かめながら理解しておくことが大切だと思います。

 いざ本番で応用問題が出て困ってしまっても、この練習をしていれば対応できるはずです。

 次の記事では、過去に出題された同様の問題を詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください↓

chemist-programming.hatenablog.jp

 

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頻出!シクロヘキサンの立体配座【薬剤師国家試験 第107回 問102】

 シクロヘキサンの立体配座および配置の問題。

 国試にしろ定期試験にしろ、頻出の問題ですよね。

 

【1】×

 Hを省略せずにしっかりと書いて、配座異性体(下図のA')も書いて、確かめてみましょう。

 Aはシス体ではなくトランス体です。

【2】×

 Aとアを直接比べて、両者がエナンチオマーの関係にあるかどうかを判断するのは、けっこう難しいです。

 Aのエナンチオマーを書き出して、それがアと一致するかどうかを判断するほうが簡単です。

 ・まずはAのエナンチオマー(ent-A)を書き出す

 ・次にent-Aとアを比べる。そのままだと分かりづらいので、どちらか一方の向きを変える(図ではアを左右逆にしたのち、環を反転させてア’としている)

 両者は異なる化合物(立体異性体)なので、選択肢の記述は間違いです。

 

【3】○

 選択肢【1】で示した配座異性体A'の構造から、イと同じものであることが分かりますよね。

 というわけで、この選択肢は正しいです。

 

【4】○

 上もしくは下を向くのがアキシアル位で、横側を向くのがエクアトリアル位です。

 したがって、選択肢の記述は正しいです。

 ちなみに、シクロヘキサン環を地球に見立てて、置換基が地球の軸(axis)の方向に出ていることから、『axial(アキシアル)』、赤道(equator)の方向に出ていることから『equatorial(エクアトリアル)』と呼ばれています。

 

【5】×

 1,3-ジアキシアル相互作用は、アキシアル位にある置換基の間で働くものです。

 下図は、メチル基とHの間で働く1,3-ジアキシアル相互作用を示しています。

 

 Aがもつメチル基は(2つとも)エクアトリアル位であるため、選択肢の記述は間違いです。

 

 というわけで、正解は【3】と【4】でした。

 

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不対電子をもつかどうか判断するコツ【薬剤師国家試験 第107回 問9】

 不対電子を1つもつということは、分子を構成する原子がもつ価電子の総数が、奇数のはずです。

 電子2つで1本の共有結合、電子2つで1組の非共有電子対ですからね。

 奇数ならば、余った1個の電子が不対電子になるはずです。

 価電子の数を数えていきましょう。

 

【1】C:4個、O:6個、合計10個

【2】N:5個、O:6個、合計11個

【3】S:6個、O:6個、合計24個

【4】O:6個、合計12個

【5】N:5個、合計10個

 

 というわけで、正解は【2】の一酸化窒素です。

 

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際どい立体異性体 ーキニジンとキニーネー【薬剤師国家試験 第107回 問8】

 キニジンとキニーネに関する問題。

 選択肢【1】【2】の記述を読んでみると、両者がエナンチオマーの関係にあるのか、ジアステレオマーの関係にあるのか判断する必要があるようです。

 

 選択肢【3】では、構造異性体の関係にあるかどうか聞かれています。

 もしこの選択肢がなくても、2つの化合物の立体配置を比べるときは、まずは構造異性体ではないことを確認しておくことが前提として大切です。

 

【1】×

 エナンチオマーの関係にあるならば、キニーネの全ての不斉炭素原子が、キニジンがもつ不斉炭素原子の逆の立体配置であるはずです。

 下図のように、赤い矢印で示したところは逆の立体配置ですが、青い矢印で示したところは同じ立体配置です。

 したがって、両者はエナンチオマーの関係ではありません。

 なお、キニジンかキニーネをひっくり返してみて、鏡像関係にあるのかどうか確認してもOKです(本番は時間がないので勉強時にやってみるといいと思います)。

 

【2】○

 選択肢【1】の解説で示したとおり、複数の不斉炭素原子をもち、その一部の立体配置が同じで、一部が逆の立体配置です。

 このような場合、両者はジアステレオマーの関係にあります。

 なお、分子内に対称面が存在する場合はメソ体なのでエナンチオマーの関係でもジアステレオマーの関係ではなく、まったく同じも化合物です。

 もちろん、今回のキニーネとキニジンのケースには当てはまりません。

 

【3】×

 立体配置を抜きにして両者の構造を見比べてみると、同じ化合物ですよね。

 というわけで、構造異性体ではありません。

 

【4】×

 ジアステレオマーの関係にあるものの融点は、原則として一致しません。

 エナンチオマーの関係にあるものならば、必ず一致します。

 

【5】×

 ジアステレオマーの関係にあるものの比旋光度の絶対値は、原則として一致しません。

 エナンチオマーの関係にあるものならば、符号は異なりますが絶対値は必ず一致します。

 

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