【薬剤師国家試験 第105回 問9】キラルなのかアキラルなのか間違えない方法
これら5つの立体異性体が、キラルなのかアキラルなのかを判定する必要があります。
次の図に示したように、分子内の対称面を見つけて判断するのが一般的な解き方かと思います。
赤色もしくは青色で示した直線が対称面を示しています。
このように、立体異性体1〜3、そして5は対称面をもっています。
立体異性体4については下の図に示しました。
この4だけは対称面をもっておらず、鏡に映した関係である鏡像異性体4'が存在します。
これら2つの立体異性体は重なり合わないため、4はキラルな化合物というわけです。
したがって、この問題の正解は4番です。
以上のように、対称面を見つけると、簡単に問題を解くことができます。
ただし、この問題で与えられた構造は、シクロヘキサン環の各炭素に置換基が一つずつ付いている、とても分かりやすい構造だったため、容易に対称面を見つけられたと言えるでしょう。
環状の化合物が平面的に描かれている場合、対称面があるのか、ないのか判断しやすいですよね。
例えば他にも、次のような5員環の化合物の場合も、対称面を見つけるのは簡単です。
cis-1,2-ジメチルシクロペンタン(上の化合物)は対称面をもつため、アキラルな化合物ですが、trans-1,2-ジメチルシクロペンタン(下の化合物)は対称面をもたないため、キラルな化合物です。
というわけで、鎖状の化合物や、さらに難解な構造をもつ化合物(分子不斉など)が出題されたときに備えて、次のような方法の練習をしておくことをお勧めします。
その方法とは、先ほどから立体異性体4やtrans-1,2-ジメチルシクロペンタンで行なっているように、まずは鏡に映した構造を書き出し、それを元々の構造と比較するという作業を、アキラルな化合物に対しても行なうというものです。
つまり、問題の選択肢として与えられている全ての構造に、この作業を行なうわけです。
このさい、両者が重なり合ったら、同じ化合物なのでアキラルです。
重なり合わなかったら、異なる化合物なのでキラルというわけです。
この流れで判定していきます。
さて、先ほどの酒石酸を例にして、この作業をしっかりと練習しておきましょう。
与えられた酒石酸の構造をAとして、次の図を用いて説明します。
キラルなのかアキラルなのかを問われたら、鏡に映した構造を書いてみて、元々の構造と比較してみましょう。
繰り返しになりますが、重なり合うならアキラル、重なり合わないならキラルな化合物です。
最初に述べた対称面を探す方法に頼って慣れ切ってしまうと、鎖状タイプの構造が出題されたときに面食らってしまうので、日頃から書き出す方法で練習していきましょう。
慣れてくると、易しい構造であれば書き出さずとも頭の中でイメージできるようになります。
対称面を探す方法は、書き出す方法をしっかりできるようになった上で、試験中の解答時間を短縮するために使うようにしたほうがいいと思います。
これに関連して、不斉炭素原子のR/Sを決定する方法を、不斉炭素原子の基本からじっくり解説した記事を過去に投稿しています。
リンクを貼っておきますので、復習に役立てていただければと思います。
chemist-programming.hatenablog.jp
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問題の出典: 厚生労働省ホームページ
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198922.html)