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【薬剤師国家試験 第102回 問104】フリーデル・クラフツ アルキル化 〜解法はニ通りある〜

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 化合物Aを塩化アルミニウムと反応させて化合物Bを合成し、水酸化ナトリウムを用いる条件でジクロフェナクナトリウムに変換しています。 

 第一段階のAlCl3で思い出される反応は、Friedel–Craftsアルキル化ではないでしょうか?

 下記のような反応でしたね。

 ハロゲン化アルキルのハロゲン部分が塩化アルミニウムと反応した後、芳香族求電子置換反応を起こします。

 この時、ハロゲン化アルキルの構造によっては、もちろんカルボカチオン中間体が生成することもありますし、その際、水素やアルキル基が移動して転位することもあるんでしたね。

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 Friedel–Craftsアルキル化を、問題になっているAの反応に当てはめると、次のようになります。

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 ハロゲン部分が塩化アルミニウムと反応した後、分子内の芳香族求電子置換反応を起こします。

 最終生成物は、選択肢4番の化合物になります。

 

 さて、この問題の反応式を見てFriedel–Craftsアルキル化を思いつくのは、なかなか難しいと思います。

 思いつかなかったり、そもそもFriedel–Craftsアルキル化を忘れてしまったりした場合でも、解法がもう一つあります。

 どういうことかと言いますと、最終生成物であるジクロフェナクナトリウムから逆算して考える……という方法があります。

 つまり、NaOHと反応してジクロフェナクナトリウムになる化合物はどれなのか? ……と考えればいいわけです。

 候補となる選択肢1から5の化合物を上記の反応条件に付してジクロフェナクナトリウムに変換されるのは、4番の化合物だけですよね。

 下に示すように、アミド構造が分解してジクロフェナクナトリウムになります。

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 ちなみに余談ですが、エタノールは4番の化合物を溶かすために使われていると思われます。

 このエタノール水酸化ナトリウムから、フラスコ内ではナトリウムエトキシドが発生していることになります。

 そのため、ナトリウムエトキシドがアミド構造を分解させて、エステルが生じている可能性があります。

 ただ、このエステルはさらに水酸化ナトリウムと反応して、最終的にはジクロフェナクナトリウムに変換されるでしょう。

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問題の出典: 厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000168886.html