前回の記事(RS表示について)↓
chemist-programming.hatenablog.jp
今回の記事では、薬剤師国家試験の問題にトライします。
第105回の問7です。
不斉炭素原子のRもしくはSを帰属していきましょう。
化合物を命名する問題ですね。
まず、一番長い炭素鎖に番号を振っていきます。
3個なので主鎖はプロパンですね。
官能基は水酸基とメチル基がついたアミノ基があって、優先順位は水酸基の方が高いです。
これは覚えるしかありません。
水酸基の方が優先順位が高いので最後はアルコールの「-ol」で終わります。
5つの選択肢の中に接頭語の「hydroxy」はありませんよね。
また、接尾語の「-amine」ではなく、接頭語の「amino」になります。
アルコールとして考えるので、水酸基が直接結合している炭素原子から、1, 2, 3……と番号を振っていきます。
ご覧のとおり1位と2位の炭素が不斉炭素原子です。
それでは、2位の不斉炭素原子がRなのかSなのか帰属していきましょう。
まずは、不斉炭素原子に直接結合している原子の優先順位を決めていきます。
窒素、炭素、水素、炭素ですので、窒素原子が1番で水素原子が4番です。
次に、2つの炭素原子を比較していきます。
一方が(O, C, H)で、一方が(H, H, H)ですよね。
両者を比較したとき、より原子番号の大きい原子が含まれている置換基の優先順位が高くなります。
したがって、2番と3番は下に示したようになります。
1番→2番→3番と辿っていくと、反時計回りなのでS配置なりますね。
前回の記事で学んだように、時計回りならR配置、反時計回りならS配置です。
続いて、1位の不斉炭素原子について考えます。
こちらも直接結合している原子の優先順位を決めていきましょう。
酸素、炭素、炭素、水素ですので、水酸基が1番で、水素原子が4番です。
2つの炭素原子については、ベンゼン環の炭素が(C, C, C)ですよね。
前回の記事で説明した通り、二重結合で描かれているところは2回カウントします。
もう一方の炭素原子は(N, C, H)です。
先ほどと同様に、より原子番号の大きい原子が含まれている置換基の優先順位が高くなります。
そのため、窒素のある方が優先順位が高くなります。
というわけメチルアミノ基が直接結合している炭素原子が2番で、ベンゼン環の炭素原子が3番です。
4番の(一番優先順位の低い)水素原子が手前側を向いてしまっていますので、向きを描き換えましょう。
4番の水素原子を奥側にして、2番と3番の炭素原子を同一平面上にして描くと、1番の水酸基が手前側を向きます。
描き換えた後で、1番→2番→3番と辿っていきます。
反時計回りなのでS配置ですね。
選択肢に書いてあるように、位置の番号も含めて『(1S,2S)- 』と表記します。
最後に、置換基について考えていきます。
問題の化合物に改めて位置番号を振っておきます。
上図に示したように、1位にフェニル基が、2位にメチルアミノ基があります。
置換基の順番はアルファベット順ですので、メチルアミノ基(methylamino)が前で、フェニル基(phenyl)が後ろにきます。
もちろん、「di-」や「tri-」といった数を表すものがありましたら、それらは考慮しませんのでご注意ください。
というわけで、(1S,2S)- で、2位にメチルアミノ基があって(2-Methylamino)、1位にフェニル基(1-phenyl)があり、主鎖の炭素数が3つのアルコール(propan-1-ol)ですね。
そのように命名されている3番が正解でした。
このように落ち着いて優先順位を決定し、一番優先順位の低いものを紙面の向こう側(奥側)にして、時計回りなのか反時計回りなのかを判断できれば、R配置なのかS配置なのかを導けます。
前回の記事で述べたように、分子模型やAvogadroなどのソフトを使って正四面体構造を何度もイメージしましょう。
そして、この記事で説明したように立体構造を描き直す練習をしましょう。
それができれば、R配置なのかS配置なのかを決定することは怖くなくなります。
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問題の出典: 厚生労働省ホームページ
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198922.html)