【薬剤師国家試験 第102回 問105】変化している部分構造に着目しよう
体内では、グアニンが加水分解されることによってキサンチンに変換された後、酸化されて尿酸が生成するそうです。
この問題では、途中で生じるキサンチンの構造を考えます。
最終的に尿酸に変換されるためには、図の位置a, bのどちらかに、酸素原子が導入されなければなりません。
問題文には、最初の段階で「加水分解」と書かれていますので、aまたはbの位置で加水分解してみましょう。
H2Oに由来する酸素原子が導入されて、キサンチンが生じることが予想されますよね。
加水分解して考えていきたいのですが、その前に、この反応条件はどのぐらいのpHを想定したら良いのかを考えましょう。
胃液や膵液など、生体内にpHが酸性や塩基性の環境はもちろんありますが、基本的には中性です。
とりあえず、ここでは中性の条件で加水分解して考えていきますね。
まずはaの位置で加水分解してみます。
この反応機構は難しいのですが、共鳴構造式(A ↔︎ B)を書いて極限構造式Bで考えると、分かりやすいと思います。
aの位置に水分子が付加し、プロトンの移動を経て、化合物Cができあがりました。
赤線で囲った部分構造は、選択肢の構造の中にはありませんでした。
また、反応機構をCから先に書き進めてみても、五員環の部分が分解してしまいます。
五員環の部分が分解してしまった構造も、選択肢にはありません。
なお、この反応機構についてですが、共鳴構造式(A ↔︎ B)を書かずに、AからCへの変換を下記のように書いても良いと思います。
続いて、bの位置で加水分解してみましょう。
こちらの場合も、共鳴構造式(A ↔︎ D)を書いて極限構造式Dで考えると、やはり分かりやすいと思います。
bの位置に水分子が付加し、プロトンの移動を経た後、アンモニアが脱離します。
その結果、選択肢2番の化合物になりました。
もちろん、これも共鳴構造式(A ↔︎ D)を書かずに、下記に示すようにAから2番の化合物への変換を書いても良いと思います。
以上のように、aではなくbの位置で加水分解すると、キサンチンの構造にたどり着くことができました。
正解は2番になります。
この加水分解について調べてみると、実際のところは生体内の酵素によって引き起こされる反応でした。
酵素反応とはいえ、今回述べたように、有機化学で学習した加水分解の反応機構を実際にとりあえず書いてみるだけでも、答えを導くことが可能です。
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興味のある方は是非どうぞ↓
問題の出典: 厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000168886.html)