前回の記事(形式電荷について)↓
chemist-programming.hatenablog.jp
今回は、問題を解きながら、ルイス構造式と形式電荷について理解を深めていきたいと思います。
第105回薬剤師国家試験の問6です。
選択肢には、炭素原子1つと水素原子を3つもつ様々な構造が並んでいます。
まずは、これらに水素原子が1つ増えた化合物であるメタン(CH4 )について考えてみましょう。
シンプルな化合物から考えていくと、理解しやすくなると思います。
メタンのルイス構造式を下に示します。
炭素原子は、原子番号が6番なので、陽子の数が6コ、電子の数も6コです(もし原子番号が分からなくなったら周期表を思い出しましょう)。
これらの電子は、1s軌道に2コ、2s軌道に2コ、2p軌道に2コ入っています。
下記のとおり1s軌道の電子は結合形成に使われないので、2s軌道と2p軌道に入っている合計4つの電子が結合に使われる可能性があります。
炭素原子と水素原子でシェアしている8つの電子を半々にし、メタンの炭素原子に属している電子を数えてみましょう。
下に示したように4つですよね。
炭素原子が元々もつ価電子の数と同じですので、もちろん、プラスやマイナスの形式電荷は必要ありません。
これを踏まえて設問に入っていきましょう。
まずは1番の選択肢から考えていきます。
1番の選択肢では、 下に示したように炭素原子に属している電子が5個ですので、元々の価電子の数である4コよりも1つ多いですよね。
そのため、電子の数が陽子の数を上回ることになるので、形式電荷はプラスではなくマイナスを記載します。
詳しく数えると、炭素原子は陽子が6コで、電子は価電子の5コと1s軌道の2コで合計7コですよね。
1番の選択肢では、そもそも電子配置と形式電荷の関係が間違っています。
2番の選択肢の構造は正しい形式電荷が書かれていて、これをメチルアニオンと呼びます。
ただし、正解であるメチルカチオンではないので2番の選択肢も×です。
続いて3番です。
3番の炭素原子に属している電子の数は4個です。
元々の炭素原子の価電子と同じ数ですね。
陽子と電子の数が同じということは形式電荷が0であるため、プラスやマイナスは書きません。
というわけで、3番については電子配置と形式電荷の関係が合っていますね。
ちなみに、この構造はメチルラジカルという名前です。
構造に間違いはありませんが、メチルカチオンではないので×です。
続いて4番です。
4番については、下に示したように炭素原子に属している電子の数が3個です。
元々の炭素原子の価電子(4コ)よりも電子の数が1コ少なくなっています。
陽子の数が1コ多いため、プラスの形式電荷を書く必要があります。
したがって、3番の選択肢については電子配置と形式電荷は正しいです。
カチオンはプラスに帯電しているもののことを指すので、これがメチルカチオンであり正解になります。
なお、5番の構造は4番のものと同じ電子配置ですが、形式電荷がマイナスなので間違っていますね。
以上、ルイス構造式のミニ講義を3回にわけて記事にしました。
ルイス構造式が書けて、かつ形式電荷を正しく書けるようになれればOKです。
そのためにはまず、原子ごとに価電子の数を思い出せるようにしておく必要があります。
個人的には、周期表をある程度覚えて、電子の数をいつでも思い出せるようにしておくのが、一番楽だと思います。
原子番号 = 電子の数 = 陽子の数ですので、原子番号が分かれば思い出せます。
そこから電子配置を考えて、価電子の数を導きましょう。
ルイス構造式に関連した過去の記事のリンクを下に載せておきますので、合わせてご覧いただければと思います。
chemist-programming.hatenablog.jp
chemist-programming.hatenablog.jp
---
本ブログの管理人が薬の書籍を執筆しました↓(2024年9月発売)
薬理学を丁寧に説明しましたので、是非よろしくお願いします!
興味のある方は是非どうぞ↓
問題の出典: 厚生労働省ホームページ
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198922.html)