【大学/薬学部】有機化学ミニ講義 ルイス構造式②
前回の記事(ルイス構造式の基本)↓
chemist-programming.hatenablog.jp
前回は、ルイス構造式について基本的なことを述べました。
この記事では、電荷をもつイオンのルイス構造式を見ていきます。
プラスあるいはマイナスの形式電荷を理解しておかないと、反応機構を書いているときに分からなくなってしまうことがあるので、しっかり確認していきましょう。
イオンの例として、下にアンモニウムイオンを示しています。
窒素の近くにプラスの形式電荷が書かれていますよね。
このような形式電荷を書くのか、書かないのか、あるいは、プラスなのかマイナスなのかを判断する際は、まず、対象となっている原子が元々いくつ価電子をもっていたのかを思い出して下さい。
窒素原子の場合、下記のように元々5個の価電子をもっていましたよね。
なぜ5個なのか分からなくなったら前回の記事を参照にして下さい。
続いて、アンモニウムイオンの窒素原子に属している電子を数えてみましょう。
どういうことかと言うと、水素原子と窒素原子でシェアしている8つの電子を半々にして数える……ということです。
次のように、もともと電子を持っていた各々の原子のところに返してみます。
この状態で改めて窒素がもっている電子を数えていきます。
このようにして数えてみると、窒素原子に属している電子は4つ……ですよね。
もとの窒素原子の価電子(上記参照)や、アンモニア(下記参照)のときと比べて、電子が1コ減ってしまっています。
アンモニウムイオンの窒素原子に属している電子が1コ減ってしまったので、この窒素原子は陽子が1コ多い状態になります。
陽子は7個のままで、電子は上に示したように4コと1s軌道の2個で合計6個ですよね。
もちろん、陽子は正電荷……つまりプラスの電荷をもち、電子は負電荷……つまりマイナスの電荷をもちます。
そのため、陽子が1コ余っているアンモニウムイオンの窒素原子には、プラスと書いておくわけです。
さて、もう1例、考えていきましょう。
今度はオキソニウムイオンと呼ばれるイオンです。
水分子がプロトン化されたものですよね。
酸素原子の価電子は6コです。
それでは、先ほどと同じようにオキソニウムイオンの酸素原子に属している電子を数えてみましょう。
この図で示したように、5コですよね。
元々の酸素原子の価電子と比較して、1コ少なくなっています。
そのため、アンモニウムイオンのときと同様に、陽子が1コ余ることになるので、プラスの形式電荷を書いておくというわけです。
窒素原子は陽子を8コ持っており、電子は上に示した5コと1s軌道の2コで合計7コです。
陽子が1コ余っていますよね。
今回、紹介したのは簡単な化合物のみですが、複雑になってくると、形式電荷がよく分からなくなってくることもあります。
混乱したら、簡単な化合物に戻って復習していただければと思います。
次の記事では、薬剤師国家試験の問題を通してルイス構造式と形式電荷について解説します。
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