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【薬剤師国家試験 第102回 問106】ペプチドの構造を見極めよう

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 ペプチド系の医薬品に関する問題ですね。

 アミノ酸が繋がっていて、両端が修飾されています。

 それでは早速、選択肢を見ていきましょう。

 

【1】……一般的にN末端は、ペプチドを問題の図のように書いたとき、左端のことを指しますよね。

 設問には、「D-プロリン」と書いてあります。

 アミノ酸D体であるのかL体であるのか、その見分け方を復習しましょう。

 活性成分Aの左端の構造を下に示しました。

 この構造を、Fischer投影式に書き直します。 

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 まず、カルボン酸の部分を上側にして、側鎖の部分を下側にします。

 この時、カルボン酸の部分と、側鎖の部分は向こう側を向くようにします。

 すると、窒素の部分と水素原子は、おのずと手前側を向くことになりますよね。

 このとき、窒素の部分が左側にあるとL体、右側にあるとD体になります。

 設問には「D-プロリン」と書かれていましたが、この構造は窒素の部分が左側にあるのでL体であることが分かります。

 しかも、よく見てみると、この構造はプロリンの構造ではありません。

 窒素原子の隣(α位)がカルボニル基になっていますよね。

 正しいプロリンの構造を、下に示しておきます。

 ご覧のように、アミノ基の部分はピロリジン環になっています。

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 以上のことから、【1】の選択肢は×です。

 

【2】……C末端は、N末端の反対側、つまり右端のことですよね。

 設問に書いてある「窒素」は、下図の赤い矢印で示したNのことを指しています。

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 このNは、本当にプロリンの環内にある窒素原子なのでしょうか?

 プロリンの窒素原子は、N末端側の方向、つまり左側にあるはずなのに、右側にあるのはおかしいです。

 一旦、この周辺の構造をしっかり書いてみましょう。

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 左方向がN末端側で、右方向がC末端側ですので、プロリンの窒素原子を左側に、カルボキシル基の炭素原子を右側に書きました(赤い円で囲っています)。

 問題の図と比較してみると、プロリンのカルボニル基がアミド構造になっており、さらにN-エチル化されているということが分かります。

 このことから、設問の「窒素」は、環内の窒素ではないことが分かりました。

 【2】の選択肢も×です。

 以上のように、記号で省略されているアミノ酸の構造をしっかり書き出してみると分かりやすくなると思います。

 

【3】……確かに、ペプチド鎖の真ん中のあたりに「D-」の文字があります。

D-Leu」は「D-ロイシン」のことですので、この記述は○です。 

 

【4】……ペプチド系の医薬品ですので、経口投与したら胃や膵液、小腸の酵素「ペプチダーゼ」で分解されやすいですよね。

  みなさんご存知の通り、タンパク質は酵素で分解されてから、小腸で吸収されます。

 この記述は○です。

  

 以上のことから、【3】と【4】が正解でした。

 

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問題の出典: 厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000168886.html