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【薬剤師国家試験 第104回 問101】六員環の化学を考慮しながらE2反応の問題を解こう

 問101はE2反応と六員環(シクロヘキサン)の化学を組み合わせた問題ですね。

 学ぶことが多い問題ですので、しっかりと復習しておきましょう。

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 問題文にE2反応と書いてあります。

 強塩基であるナトリウムエトキシド(NaOC2H5)によって反応物のHが1つ引き抜かれ、それと同時に塩化物イオン(Cl)が脱離したわけですね。

 その結果、BCのアルケンが生成しています。

 それでは、選択肢を上から読んでいきましょう。

 

【1】……化合物Aの立体配座に関する記述です。

 Aの最も安定な配座について、考えていきましょう。

 この化合物は、3つの置換基を備えたシクロヘキサンです。

 まずは、最も嵩高い置換基であるイソプロピル基が、エカトリアルに配向している配座になるように図示します(①)。

 置換基がアキシャルに配向していると、「1,3-ジアキシャル相互作用」により化合物が不安定化されてしまうんでしたよね。

 エカトリアルに配向しているイソプロピル基を書いたら、それに対応して他の置換基も正しく書いていきましょう(②)。

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 この図は、IIの立体配座と同じですよね。

選択肢1は◯です。

 

【2】……E2反応においては、引き抜かれるHと脱離するクロロ基が、反対向きで同一平面上(アンチペリプラナー)のときに、最も反応が進行しやすいんでしたね。

 言い換えると、水素原子とクロロ基がともにアンチの関係にあり、かつアキシャルに配向しているときに反応が進行します。

 したがって、反応はIではなくIIの立体配座のときに進行しますね。

 選択肢2の記述は×です。

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【3】……BCのどちらが多く生成するのかを聞いていますね。

 設問2でIIの立体配座で反応が進行することが分かったので、この立体配座を考えていきましょう。

 このとき、下に示したaとb、どちらのHも引き抜かれ得るHです。

 クロロ基とアンチの関係にあり、かつ、同一平面上にありますからね。

 aのHが反応すると化合物Bが生成し、bのHが反応すれば化合物Cが生成します。

    

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 E2反応では、生じるアルケンに着目しましょう。

 アルケンの安定性は、以下の通りでしたよね。

 多置換アルケンであるCが主生成物になるので、 選択肢3の記述も×です。 

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【4】……この反応はE2反応ですから、一段階で進行します。

 カルボカチオン中間体は経由しませんので、この記述は間違いです。

 この設問は、E1反応とE2反応を区別できていない人に向けた引っ掛けでしょう。

 

【5】……E2反応の反応速度は、下記の式で表されます。

       

     v = k [R-X] [base]

 

 E2反応の「2」は、反応速度vが2種類の化合物(ハロゲン化アルキルR-Xと塩基base)の濃度に比例することを意味しています(kは反応速度定数)。

 

 以上のことから、正解は【1】と【5】です。

 

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問題の出典: 厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198921.html