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【薬剤師国家試験 第103回 問209】レボドパ→ドパミンの知識をもって問題に臨もう

 問209は薬理の問題に見えますが、有機化学の知識も必要です。

 早速、解いていきましょう。f:id:chemist-programming:20200212110316p:plain

 セレギリン、レボドパ、カルビドパの構造が示されています。

 レボドパはアミノ酸トランスポーターにより脳内に取り込まれ、脳内で「芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素」という酵素により脱炭酸されます。

 こうしてドパミンに変換されてから、薬効を示します。

 この問題は、この流れを分かっていないと解けそうにありません。

 ちなみに、この問題の構造式には名前が振っていないので、レボドパの構造を覚えていない場合、どれがレボドパなのか分かりません。

 比較的シンプルなドパミンの構造を覚えていれば、脱炭酸する前の構造をもつ化合物Bがレボドパであることが分かりますよね。

       f:id:chemist-programming:20200221153321p:plain

 残りのセレギリンとカルビドパの構造は覚えているでしょうか?

 この2つの構造を覚えていなくても、つまりACの名前を特定できなくても、正解にたどり着けます。

 ですので、覚えていないものとして解説しますね。

 それでは、選択肢を見ていきましょう。

 

【1】……AとCはセレギリンとカルビドパのことです。

 セレギリンとカルビドパは、異なる酵素を阻害しますよね。

 セレギリンはモノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬で、カルビドパは先ほど登場した「芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素」を阻害するんでしたよね。

 したがって、同じ標的分子(酵素)ではないので、この記述は×です。

 

【2】……Bはレボドパのことでしたよね。

 先述のとおり、レボドパは生体内でドパミンに変換されてから薬効を示すので、プロドラックです。

 よって、この記述は正しいです。

 

【3】……上記のとおり、Bのレボドパは脳内で芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素によって脱炭酸されてドパミンに変換されます。

 この設問も◯です。

 

【4】……ヒドラゾンは、下記の構造のことです。

 第104回の問102で登場した反応を思い出してください。*1

 カルボニル化合物とヒドラジンもしくはヒドラジン誘導体との反応で生成するんでしたね。

   f:id:chemist-programming:20200221153349p:plain

 Cは、ヒドラゾンではなく、ヒドラジン構造をもっています。

したがって、この記述は間違いです。

 

【5】……血液脳関門、いわゆるBBBは、基本的に極性の低い化合物を通過させ、極性の高い化合物は通過させません。

 そのため、BやCのような極性が高い化合物は血液脳幹門を通過しそうにありません。

 しかし、化合物が「アミノ酸トランスポーター」によって血液脳幹門を通過できる場合があります。

 そのような化合物は、アミノ酸と同様の構造をもっている化合物に限ります。

 レボドパはアミノ酸チロシンから合成されるので、アミノ酸と同様の構造を持っています。

 したがって、先ほどから述べているように、レボドパはアミノ酸トランスポーターによって血液脳幹門を通過することができるのです。

 その一方で、Cヒドラジン構造をもつため、アミノ酸と同様の構造をもつとは言い難いですよね。

 そのため、アミノ酸トランスポーターを通過できないというわけです。

 したがって、この選択肢は間違いです。

 

 以上のことから、【2】と【3】が正解です。

 有機化学の知識や考え方があまり活かせず、難しい問題でした。

 ちなみに、Aの構造がセレギリンで、Cの構造がカルビドパです。

 

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問題の出典: 厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198920.html