【薬剤師国家試験 第103回 問104】原因を予想してから改善方法を考えよう
問104は、酸塩化物とアミンの反応に関する問題です。
問題文を読んでみると、反応が途中で止まってしまったので、その改善方法を聞かれていることが分かりますよね。
かなり実践的な問題のようです。
改善方法を考える前に、なぜ止まってしまったのかを考えましょう。
原因を予想してから、改善を試みることが大切です。
反応機構をしっかり書いて、原因を探っていきますね。
反応機構をよく見てみると、塩基として働いているベンジルアミンがあることが原因のようです(上記スキームの赤い波線)。
塩基として使われたベンジルアミンは塩酸塩となってしまうので(上記スキームの赤い二重線)、塩化ベンゾイルとの反応には使われませんよね。
反応が半分だけ進行した後に停止してしまったというのも頷けます。
反応機構を書くことができれば、このような結論に至ることができます。
【1】……トリエチルアミンを加えておくと、どうなるのでしょうか?
この化合物を加えておけば、ベンジルアミンの代わりにプロトンを捕捉してくれます。
そのため、ベンジルアミンが塩基として働かずに済み、すべて塩化ベンゾイルと反応してくれるでしょう。
もちろん、トリエチルアミンが先に塩化ベンゾイルと反応することもあるでしょう。
その後、続けてベンジルアミンが反応するため、この場合も塩酸塩になるのはトリエチルアミンです。
いずれの経路にせよ、ベンジルアミンのほぼ全量を塩化ベンゾイルと反応させるために、トリエチルアミンを加えることは適切な改善方法です。
【2】……ベンジルアミンを増やすと、どうなるのでしょうか?
上記のとおり塩酸塩になってしまうわけですが、増量したことによりベンジルアミンが余るので、反応が半分進行したところで止まるということはなさそうですよね。
この処置も、適切な改善方法になります。
【3】……塩化ベンゾイルを消費したいのに、増やしてしまってはいけませんよね。
これは改善方法として全く適切ではありません。
【4】……メタノールは、塩化ベンゾイルと反応してしまうでしょう(下記参照)。
そのため、選択肢【4】も適切な改善方法ではありません。
【5】……濃度が高くなって反応速度は大きくなりそうですが、これではベンジルアミンの塩酸塩が生じるという根本的な問題を解決できません。
したがって、これも適切な改善方法ではありません。
以上のことから、【1】と【2】が正解です。
反応が途中で止まってしまう原因を予想してからでないと、正解にたどり着くことは難しいと思います。
問104は実践的な良問でしたね!
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問題の出典: 厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198920.html)