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【薬剤師国家試験 第103回 問103】SN1反応の反応機構を書いて解こう

 問103は、問題文にSN1反応と明記してあります。

 SN1反応の知識をもって解いていきましょう。

f:id:chemist-programming:20200212105355p:plain【1】……命名法に関する設問です。

 鎖状の炭化水素命名する際には、はじめに主鎖を見極めましょう。

 一番長い炭素鎖を探します。

 一番長い部分は下に示したところで、炭素数が5つなのでペンタンですよね。

        

 主鎖に結合している置換基は、メチル基が2つにブロモ基が1つですよね。

        f:id:chemist-programming:20200317131415p:plain

 この設問では、これら3つの置換基の位置を「3,3,4」とナンバリングしています(下図の左)。

 そうではなく、「2,3,3」になるように(なるべく小さな数字を多く使うように)主鎖に番号を振ります(下図の右)。

     f:id:chemist-programming:20200317131435p:plain

 この時点で、選択肢の命名は間違っていることが分かります。

 正しく命名すると、「3-bromo-2,3-dimetylpentane」ですね。

 アルファベット的に「methyl」より「bromo」の方が若いため、「bromo」を前にもってきています(このとき、「di」はカウントしません)。

 最後に、絶対立体配置について考えます。

 まず、下のようにして優先順位を決めます。

 一番優先順位が高いのは、臭素ですよね。

 優先順位がもっとも低いメチル基を向こう側にして、優先順位が高い順にたどっていくと、反時計回りなので『S』体であることが分かりますね。

 これは第103回の問7でも解説しました。

f:id:chemist-programming:20200317131454p:plain

 以上のことから、この設問は×です。

 

【2】……次に示すように、SN1反応はカルボカチオン中間体を経由するメカニズムで進行するんでしたね。

f:id:chemist-programming:20200317131518p:plain

 このカルボカチオンは平面構造をとっており(sp2混成)、両方の面から1:1の割合で水分子の求核攻撃を受けます。

 したがって、生成物のアルコールはラセミ体として得られます。

 光学的に純粋にはなり得ませんので、この選択肢の記述は間違いです。

 

【3】……SN1反応は、1分子の濃度で決まります。

 式で表すと、次のようになります。

 

     v = k [R-X]

 

 SN1反応の「1」は、反応速度vが1種類の化合物(ハロゲン化アルキルR-X)の濃度に比例することを意味しているんでしたね(kは反応速度定数)。

 よって、この設問の記述も誤りです。

 

【4】、【5】……反応機構の解説(【3】)から、この2つの記述が正しいことが分かりますね。

 発生したカルボカチオン中間体に、水分子が求核攻撃します。

 

 したがって、正解は 【4】と【5】です。

 

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問題の出典: 厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198920.html