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【薬剤師国家試験 第104回 問103】反応する官能基を見抜こう

 続いて、問103を解いていきましょう。 

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 この反応は、ケトンとヒドラジン誘導体の反応ですね。

 大学の講義では、「シッフ塩基」とか「カルボニル試薬」という言葉を用いた説明があったかもしれません。

 まずは、各々の化合物のどの官能基が反応に関わるのかを見極めましょう。

 d-カンフルの構造中で反応性が高い官能基は、カルボニル基ですよね。

 反応相手が求核性をもつのであれば、カルボニル基は求電子剤になります(条件次第ではエノールやエノラートになり、求核性をもつ化合物になります)。

 一方、2,4-ジニトロフェニルヒドラジンは、ヒドラジン部分(アミノ基)が求核性をもちます。

 ニトロ基はあまり反応性が高くないですよね。

 比較的強力な還元剤を使用した場合に反応します。

 この反応では、2,4-ジニトロフェニルヒドラジンが求核剤になり、d-カンフルが求電子剤になるわけです。

 それでは、実際に反応機構を書いてみましょう。 

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【1】……脱水縮合ということは、2つの化合物が結びつくとともに、水分子が生成するわけですよね。

 その通りなので、この記述は◯です。

 

【2】……窒素は発生しませんよね。

 窒素原子が2つあるので、窒素が発生するだろう……と思わせる引っ掛けでしょう。

 反応機構を書くことができれば、間違えませんよね。

 この選択肢は×です。

 

【3】……オキシムは下記の構造をもつ化合物のことでしたよね。

 主に、Beckmann転位を学ぶ際に登場します。

 この選択肢も×です。

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【4】……オレフィン構造はもちません。

 反応機構を書くことができれば、このような選択肢には惑わされませんね。

 

【5】……生成物の構造の中には、ベンゼン環を含む共役系が確かに存在していますね。

 このような化合物は、たいてい色をもちます。

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 ちなみに、この反応は呈色に使われます。

 実際に、有機合成の現場で使われるんですよ。

 TLCのスポットから、カルボニル基があるのかどうかすぐに判断できますので、重宝されます。

 たしかにスポットが橙赤色になります(黄色っぽいときもあったような気がしますが)。

 

 以上のことから、【1】と【5】が正解です。

 反応機構を書くことができれば、わりと簡単に解けますね。

 反応機構を書く時間がなかったり、そもそも反応機構を覚えていなかったりしたら、どの官能基とどの官能基が反応するのかだけでも見極めましょう。

 先述のとおり、カルボニル基とヒドラジン部分(アミノ基)が反応します。

 それさえ分かれば、C–NもしくはC=N結合ができることが分かります。

 そのため、ヒドラジン部分のNを2つとも失ってしまう【2】、そして、生成する結合がC=Cである【4】を選ぶことはなく、正解できる確率を上げられますね。

 

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 問題の出典: 厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198921.html